自衛隊で働く看護師には、大きく分けて「自衛官看護師」と「技官看護師(防衛技官)」の2つの道があります。自衛隊に属する看護師は「自衛官看護師と技官看護師」の2種類。まずはこの2つの違いを理解していきましょう。
自衛官看護師と技官看護師:基本的な違い

自衛隊で働く看護師には、大きく分けて「自衛官看護師」と「技官看護師」の2つの道があります。この違いを理解することは、将来のキャリアパスを考える上で非常に重要です。
自衛官看護師は、文字通り「自衛官」としての身分を持ちます。これは制服を着用する軍人としての立場であり、階級制度の中で昇進していきます。二等陸・海・空士から始まり、准尉、尉官、佐官へと昇進する可能性があります。また、防衛医科大学の中に看護科があり、技官(正しくは防衛技官といいます)という防衛省所属ですが自衛官ではない看護師になる道も用意されています。
これらを合わせて通称、自衛隊看護師と言われています。
自衛官看護師は防衛医科大学校看護学科学生(自衛官候補看護学生)として大学卒業後採用される流れになります。そのため現在看護師をされている方が転職で希望して自衛官看護師ならびに技官看護師にはなれるものではありません。(防衛医科大学募集基準18歳~21歳まで)。
防衛医科大学校看護学科学生(自衛官候補看護学生)とは
防衛医科大学校看護師養成課程(自衛官候補看護学生)は、保健師・看護師である幹部自衛官となるべき者を育成するコースです。4年間の教育を受け保健師・看護師の国家資格の取得を目指します。免許取得後は、陸・海・空各幹部候補生学校に入校し、幹部自衛官に必要な知識と技能を学びながら、幹部としての資質を養います。その後、自衛隊看護師として全国の自衛隊病院や衛生科部隊等で勤務し、実務経験を積んでいきます。

身分と雇用形態の違い

自衛官看護師は、文字通り「自衛官」としての身分を持ちます。これは制服を着用する軍人としての立場であり、階級制度の中で昇進していきます。二等陸・海・空士から始まり、准尉、尉官、佐官へと昇進する可能性があります。
一方、技官看護師は「事務官等」という国家公務員としての身分を持ちます。自衛官ではなく、一般の国家公務員と同様の立場で、制服の着用義務はなく、階級もありません。国家公務員としての給与体系に沿った役職(係員、主任、係長、課長補佐など)によるキャリアパスとなります。

業務内容と勤務先の違い
自衛官看護師と技官看護師は、業務内容や配属先にも違いがあります。
主な業務と役割
| 自衛官看護師 | 技官看護師 |
|---|---|
| 基本的な自衛官としての訓練・任務あり | 専門的な看護業務に特化 |
| 災害派遣や国際平和協力活動への参加機会が多い | 自衛隊病院や医務室での通常の医療活動が中心 |
| 野外での医療活動や戦術的な医療支援 | 専門性を活かした医療サポートに集中 |
| 有事の際は前線での医療活動も想定 | 災害派遣等にも参加するが、医療専門家として後方支援的役割 |
代表的な勤務先
| 自衛官看護師の主な勤務先 | 技官看護師の主な勤務先 |
|---|---|
| 各駐屯地・基地の医務室 | 自衛隊中央病院(東京都世田谷区) |
| 野外衛生隊 | 各地区の自衛隊病院(札幌、仙台、横須賀、富士、岐阜、大阪、呉、福岡など) |
| 国際平和協力活動の医療チーム | 防衛医科大学校病院(埼玉県所沢市) |
| 災害派遣医療チーム | 一部の大規模駐屯地・基地の医務室 |
技官看護師は比較的固定された医療施設での勤務が多いのに対し、自衛官看護師は様々な環境での活動が想定されています。
給与・年収と福利厚生の比較
給与体系と福利厚生は、キャリア選択において非常に重要な要素です。
給与体系の違い
| 項目 | 自衛官看護師 | 技官看護師 |
|---|---|---|
| 基本給 | 自衛官としての俸給表による | 国家公務員の給与表に基づく |
| 特徴的な手当 | 航空手当、潜水手当、特殊勤務手当など | 扶養手当、住居手当、通勤手当など |
| 昇給 | 階級昇進による | 経験や役職に応じた |
年収の目安
| キャリアステージ | 自衛官看護師 | 技官看護師 |
|---|---|---|
| 初任給 | 月額15万円~17万円程度(二等陸・海・空士) | 月額18万円~20万円台(大卒) |
| 中堅 | 月額20万円~30万円程度(曹) | 月額25万円~35万円程度(主任級) |
| 上級職 | 月額25万円~40万円程度(尉官) | 月額35万円~45万円以上(係長級以上) |
| 年収(初任~5年目) | 350万円~450万円程度 | 380万円~480万円程度 |
| 年収(10年目前後) | 450万円~550万円程度 | 480万円~580万円程度 |
| 年収(上級職) | 550万円~700万円以上 | 600万円~750万円以上 |
一般的に、キャリア初期は技官看護師の方が給与面で有利な傾向がありますが、長期的には両者の差は少なくなります。また、自衛官看護師の場合、特殊な任務や環境での勤務による各種手当が加算されることもあります。
福利厚生の比較
両者とも国家公務員共済組合に加入するため、基本的な福利厚生は同等です。
| 福利厚生 | 自衛官看護師 | 技官看護師 |
|---|---|---|
| 医療保険 | 国家公務員共済組合 | 国家公務員共済組合 |
| 年金制度 | 国家公務員共済組合(20年以上勤務による特別制度あり) | 国家公務員共済組合 |
| 休暇制度 | 年次休暇、特別休暇など | 年次休暇、特別休暇など |
| 住宅支援 | 官舎利用、住居手当など | 官舎利用、住居手当など |
| その他特徴 | 自衛官特有の福利厚生あり、不規則勤務・転勤の可能性が高い | 比較的安定した勤務環境、転勤は少ない傾向 |
必要資格とキャリアパスの違い

資格要件とその後のキャリア展開にも大きな違いがあります。
必要な資格と条件
防衛医科大学を卒業後入隊。
長期的なキャリアパス
| キャリアパス | 自衛官看護師 | 技官看護師 |
|---|---|---|
| 昇進形態 | 階級昇進(曹→准尉→尉官→佐官) | 役職昇進(主任→係長→課長補佐→課長) |
| 役割の変化 | 指揮官や教育担当などの役割 | 専門性を活かした職位(専門官など) |
| 勤務期間 | 若年定年制あり(54~56歳)、20年以上勤務で優遇 | 定年(段階的に65歳に引き上げ予定)まで |
| 特徴 | 若年退職後の民間転職も視野に入れたキャリア設計 | 専門性を深める研修や資格取得の機会が多い |
自衛官看護師と技官看護師:どちらが向いている?
どちらの道を選ぶべきか迷っている方のために、向いている人の特徴を整理しました。
自衛官看護師に向いている人
- 体力に自信があり、アクティブな活動を好む方
- 規律や階級制度のある環境で働くことに抵抗がない方
- 災害派遣や国際活動など、様々な現場での医療活動に興味がある方
- 若いうちからリーダーシップを発揮したい方
- 早期退職後の次のキャリアも視野に入れている方
技官看護師に向いている人
- 専門的な看護スキルを極めたい方
- 比較的安定した環境で長期的なキャリアを築きたい方
- すでに看護師としての経験があり、それを活かしたい方
- 公務員としての安定性を重視する方
- 専門職としての知識・技術を深めたい方
中途採用はある?

自衛隊の看護師募集は欠員募集という形で行われます。
めったに募集はありません、そのため競争率は非常に高くなるのが特徴です。
サンプル 防衛省職員 看護師募集案内

受験資格
看護師の資格を有する者 ただし、次のいずれか一に該当する者は、この試験を受験することはできません。
(1) 日本の国籍を有しない者
(2) 自衛隊法第38条第1項の規定により防衛省職員となることができない者
- ア 禁固以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又は執行を受けることがなくなるまでの者
- イ 法令の規定による懲戒免職の処分を受け、当該処分の日から2年を経過しない者 ウ 日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを主張する政党その他団体を結成 し、又はこれに加入した者
(3) 平成11年改正前の民法の規定による準禁治産者の宣告を受けている者(心神耗弱を原因するも の以外)
(4) 自衛隊法第44条の2(自衛官以外の隊員の定年及び定年による退職の特例)に該当する者(この 選考採用による官職では、令和3年度中に60歳に達する者)は、法令の規定により採用できませ ん。
https://www.mod.go.jp/asdf/iruma/bosyu/recruitment/images/boshu_kangoshi.pdf
採用後の給与等について
(1) 給与等 採用時の給与は、学歴及び病院等による勤務年数等によって異なります。 次の表は、看護学校(3年制)を卒業後に資格を取得し、病院等において5年の実務経験を経て採用 (航空自衛隊入間基地勤務)された場合の一例です。(令和3年4月1日現在) 注:左記俸給月額は、地域手当を含んだ額です。 〇このほか、法令等に基づき次の諸手当が支給されます。
・住居手当 :最高28,000円
・扶養手当 :配偶者月額6,500円、子月額10,000円等
・通勤手当 :1か月当たり最高55,000円
・その他の手当 :夜間看護等手当、超過勤務手当 等
・期末手当、勤勉手当(いわゆるボーナス):1年間に俸給などの約4.45月分 (令和2年度実績)(2) 勤務時間及び休暇等 勤務時間:交代制勤務 (土曜日、日曜日及び祝日を問わず、週38時間45分を基準とし、夜勤を含みます。) 休 暇:年次休暇、特別休暇、病気休暇及び介護休暇
(3) 福利厚生 防衛省共済組合の組合員として、宿泊及びレジャー施設の利用を始め各種支援が受けられるなど、充 実しています。
(4) 健康管理 職場には医療施設も設けてあり、十分な配慮がなされています。
技官看護師への転職手順
- 採用情報の確認
- 防衛省・自衛隊のホームページで経験者採用試験の情報をチェック
- 各自衛隊地方協力本部での相談も可能
- 応募書類の準備
- 履歴書・職務経歴書
- 看護師免許証のコピー
- 実務経験証明書など
- 採用試験の受験
- 筆記試験(専門知識、一般教養)
- 面接試験
- 適性検査・身体検査
- 内定後の手続き
- 身上調査
- 各種書類の提出
- 前職からの引継ぎ期間の調整
まとめ
自衛官看護師と技官看護師、どちらを選ぶにしても、自衛隊という特殊な環境で医療に携わることができるという魅力があります。国防や災害支援、国際貢献など、民間病院では得られない経験ができることは大きな特徴です。
看護師の求人
転職を検討中の方なら登録しておくことで様々な看護の仕事情報を探せます。無料のサポートが受けられる転職サイトでより良い仕事先を探す準備を進めておきたいです。
看護師の求人


ここからは一般病棟で看護師として働きながら自衛隊員として活躍する予備自衛官看護師という職種について説明します。
予備自衛官補(看護師):一般病院勤務と両立する看護師

「自衛隊で貢献したいけれど、現在の病院の仕事も続けたい」と考える看護師の方、予備自衛官補という自衛隊現場で働く看護師という選択肢があります。最初は予備自衛官補といい昇進すると予備自衛官となります。
ここからは予備自衛官看護師の制度、メリット・デメリット、応募条件、活動内容などを詳しく解説します。
予備自衛官制度とは
予備自衛官制度は、普段は民間企業や公的機関等で勤務しながら、必要に応じて自衛隊の任務に就く制度です。看護師の場合、「予備自衛官補(技能)」から始まり、教育訓練を経て「予備自衛官補(技能)」になるのが一般的なルートです。

| 種類 | 概要 | 対象 |
|---|---|---|
| 予備自衛官補(技能) | 技能を持つ者を対象とした予備自衛官の候補者 | 看護師免許保持者など |
| 予備自衛官(技能) | 特定の国家資格等を有し、教育訓練を終えた者 | 予備自衛官補から昇任した者など |
予備自衛官看護師の役割と活動内容
予備自衛官看護師は、通常時は一般の医療機関で勤務し、以下のような場合に招集されます:
- 有事の際の招集
- 防衛招集:武力攻撃事態等における招集
- 国民保護等招集:大規模テロ等における招集
- 災害時の招集
- 大規模災害時の医療支援活動
- 訓練招集
- 年間5日から30日程度の訓練参加
- 基本的な自衛官としての訓練
- 専門技能を活かした訓練
応募条件と採用プロセス 陸上自衛隊
募集 医療従事者
技能の資格
医師、歯科医師、薬剤師、臨床心理士、理学療法士、作業療法士、 診療放射線技師、臨床検査技師、看護師、 救急救命士、栄養士、准看護師、歯科技工士
陸上自衛隊 募集要項
応募条件
| 項目 | 条件 |
|---|---|
| 国籍 | 日本国籍を有すること |
| 年齢 | 18歳以上50歳未満(技能公募は55歳未満) |
| 資格 | 看護師免許を保有していること |
| 身体条件 | 自衛隊の定める基準を満たすこと |
採用プロセス
- 応募
- 各地方協力本部への資料請求・相談
- 応募書類の提出
- 選考
- 筆記試験(一般教養等)
- 口述試験(面接)
- 身体検査
- 教育訓練
- 予備自衛官補:約50日間の教育訓練
- 一般の部隊や自衛隊病院等での実習も含む
- 任官
- 教育訓練修了後、予備自衛官として任官
予備自衛官看護師の給与と手当
予備自衛官には、以下のような給与や手当が支給されます:
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 訓練招集手当 | 訓練参加日数に応じた日額(階級により異なる) |
| 予備自衛官手当 | 年額12,000円程度(階級により異なる) |
| 旅費 | 居住地から訓練場所までの交通費 |
| 被服 | 制服等の貸与 |
| 食事 | 訓練中の食事の提供 |
※実際の招集時には現役自衛官と同等の給与が支給されます
一般病院勤務と両立するメリット・デメリット

メリット
| メリット | 詳細 |
|---|---|
| 現職を維持したまま国防・災害救助に貢献できる | 通常のキャリアを継続しながら社会貢献ができる |
| 幅広い医療経験を積める | 通常の病院と異なる環境での医療経験が得られる |
| 災害医療のスキルが身につく | 非常時の医療対応能力が向上する |
| 追加収入がある | 訓練招集手当等の収入を得られる |
| ネットワークが広がる | 様々な職種の予備自衛官との交流が生まれる |
デメリット
| デメリット | 詳細 |
|---|---|
| 本業との時間調整が必要 | 訓練期間は通常の仕事を休む必要がある |
| 勤務先の理解が必要 | 予備自衛官としての活動について職場の理解が必須 |
| 緊急招集に応じる義務がある | 災害時等は本業より優先される場合がある |
| 体力的な負担 | 通常業務に加えて訓練等があるため体力的な余裕が必要 |
勤務先との調整ポイント
予備自衛官として活動するためには、普段の勤務先との調整が重要です:
- 事前の相談・説明
- 採用試験前に勤務先に相談する
- 予備自衛官制度の社会的意義を説明する
- 雇用形態の工夫
- 可能であれば訓練期間を年次休暇で対応
- 非常勤やパートタイム勤務の活用
- 身分保障
- 「自衛隊法」により、招集を理由とした不利益取扱いは禁止されている
- 勤務先に法的保障があることを説明する
- 活動内容の共有
- 予備自衛官としての活動で得た知識や経験を職場にフィードバックする
- 災害医療の知識は病院にとっても有益であることをアピール
実例:予備自衛官看護師のキャリア事例

| 通常の勤務先 | 予備自衛官としての活動 | 両立のポイント |
|---|---|---|
| 救急外来看護師 | 災害医療支援チーム | 救急医療スキルを相互に活かす、シフト制勤務の活用 |
| 地域中核病院看護師 | 衛生隊員(医療) | 病院の災害対策委員を兼務し関連性をアピール |
| クリニック看護師 | 医務室配属 | 週休に訓練を集中させる工夫 |
応募から活動開始までのステップ
予備自衛官看護師として活動を始めるまでの具体的なステップは以下の通りです:
- 情報収集と検討(1~2ヶ月)
- 自衛隊地方協力本部への相談
- 採用情報の確認
- 勤務先との調整検討
- 応募と試験(1~3ヶ月)
- 願書提出
- 試験受験
- 合格発表
- 教育訓練(約50日間)
- 基本教育(約30日間)
- 職種教育(約20日間) ※分割して実施される場合もあります
- 任官と活動開始
- 予備自衛官としての任官
- 訓練招集への参加開始
まとめ:予備自衛官看護師という選択
予備自衛官看護師は、現在の職場での看護師としてのキャリアを継続しながら、国防や災害救助に貢献できる貴重な道です。両立には時間管理や勤務先との調整など課題もありますが、幅広い医療経験を積み、社会に貢献できる魅力的な選択肢と言えるでしょう。
特に災害大国である日本において、平時は一般医療に従事しながらも、非常時には迅速に医療支援できる予備自衛官看護師の存在は、社会的にも大きな価値があります。看護師としてのスキルを多角的に活かしたい方、社会貢献の幅を広げたい方は、ぜひこの選択肢を検討してみてはいかがでしょうか。
