
本記事では、プライベートナースの仕事内容や料金体系、訪問看護との違い、どのような医療行為が可能なのかなど、在宅療養をより安心して送るための情報をお届けします。
プライベートナースとは?基本的な仕組みと役割
プライベートナースとは、患者さん個人と契約を結び、マンツーマンでケアを提供する看護師のことです。通常の訪問看護とは異なり、保険適用外のサービスとして提供されることが一般的です。
プライベートナースの主な特徴
- 個別契約による専任ケア: 特定の患者さんだけを担当
- 長時間滞在: 数時間から24時間体制まで対応可能
- 柔軟なサービス内容: 医療行為から日常生活のサポートまで幅広く対応
- 保険適用外: 原則として全額自己負担となる民間サービス
訪問看護師との違い
| 項目 | プライベートナース | 訪問看護師 |
|---|---|---|
| 契約形態 | 個人契約が主流 | 訪問看護ステーションと契約 |
| 費用負担 | 基本的に全額自己負担 | 医療保険や介護保険が適用可能 |
| 訪問時間 | 長時間滞在が可能 | 1回30分~1時間程度が一般的 |
| 対応範囲 | 個別ニーズに合わせて柔軟に対応 | 保険の範囲内でのサービス提供 |
| 担当制 | 基本的に固定の担当者 | 複数の看護師が交代で担当することが多い |
訪問看護は、医療保険や介護保険を利用できる公的サービスですが、訪問回数や時間に制限があります。一方、プライベートナースは費用は高くなりますが、よりパーソナライズされたケアを受けることができるのが大きな特徴です。
プライベートナースの具体的な仕事内容

提供可能な医療行為
プライベートナースは看護師資格を持つプロフェッショナルですので、以下のような医療行為を提供することができます:
- 点滴管理・交換
- 経管栄養の管理
- 在宅酸素療法のサポート
- 人工呼吸器の管理・ケア
- 褥瘡(床ずれ)予防・ケア
- 服薬管理と指導
- バイタルサインの測定・管理
- 医師との連携・報告
日常生活のサポート
医療行為以外にも、患者さんの生活の質を向上させるための以下のようなサポートも行います:
- 食事介助
- 排泄介助
- 入浴・清拭の介助
- リハビリテーションの補助
- コミュニケーションのサポート
- 精神的なケア・不安の傾聴
このように、介護との違いがわかりにくい部分もありますが、プライベートナースは医療的な視点を持ちながら生活支援を行える点が特徴です。
家族へのサポートと教育
患者さんだけでなく、ご家族への支援も重要な役割です:
- 介護方法の指導
- 医療機器の取り扱い説明
- 緊急時の対応方法の教育
- 家族の精神的ケア・レスパイトケア
プライベートナースの料金体系
プライベートナースのサービスは基本的に保険適用外となるため、料金は全額自己負担となります。その料金体系は以下のような要素で決まることが一般的です。
一般的な料金相場
- 時間制料金: 1時間あたり3,000円~5,000円程度
- 日勤(8時間): 25,000円~40,000円程度
- 夜勤(16時間): 35,000円~60,000円程度
- 24時間常駐: 50,000円~80,000円程度
料金に影響する要素
- 患者の医療依存度: 人工呼吸器管理など高度な医療ケアが必要な場合は高額になる傾向
- 看護師の経験・専門性: 専門的なスキルや経験を持つ看護師ほど料金が高くなる
- 地域差: 都市部は地方に比べて料金が高い傾向にある
- 時間帯: 夜間・休日は割増料金となることが多い
- 契約期間: 長期契約の場合、割引が適用されることもある
費用負担を軽減する方法
プライベートナースは高額になりがちですが、以下のような方法で負担を軽減できる可能性があります:
- 訪問看護との併用: 定期的なケアは訪問看護で対応し、特に必要な時間帯だけプライベートナースを利用する
- 医療費控除の活用: 確定申告で医療費控除の対象となる場合がある
- 民間の医療保険: 特定の条件下で給付金が支給される保険もある
- エージェンシーの比較検討: 複数の紹介会社から見積もりを取り比較する
どんな患者さんがプライベートナースを利用しているのか

プライベートナースサービスは、特に以下のような患者さんに選ばれています。
医療依存度が高い患者さん
- 人工呼吸器を使用している方
- 経管栄養が必要な方
- 在宅酸素療法を受けている方
- 頻繁な吸引や処置が必要な方
- 複雑な服薬管理が必要な方
これらの患者さんは継続的な医療的ケアが必要であり、家族だけでは対応が難しいケースが多いです。
看取り期の患者さん
終末期のケアでは、患者さんの状態が急変することも少なくありません。そのような不安定な時期に、24時間体制でのケアを希望する方も多くいらっしゃいます。
- がん終末期の患者さん
- 緩和ケアを受けている方
- 自宅での看取りを希望する方
リハビリ期・退院直後の患者さん
- 大きな手術からの回復期にある方
- 脳卒中などからのリハビリ中の方
- 退院直後で自宅療養に不安がある方
その他のケース
- 海外渡航時の医療的サポートが必要な方
- イベント参加時のサポートが必要な方
- 主治医からの特別な指示がある方
このように、通常の訪問看護では対応しきれないニーズを持つ方々が、プライベートナースを選択されています。
プライベートナース選びのポイント

質の高いケアを受けるためには、適切なプライベートナースを選ぶことが重要です。以下のポイントを参考にしてください。
資格・経験を確認する
- 正看護師資格の有無: 基本的には正看護師の資格を持つ方が望ましい
- 実務経験年数: 一般的に5年以上の臨床経験があると安心
- 専門分野の経験: 患者さんの疾患や状態に合わせた経験を持つ看護師を選ぶ
- 緊急時対応の経験: 急変時に適切に対応できる経験があるか
相性・コミュニケーション能力
長時間一緒に過ごすことになるため、相性やコミュニケーション能力も重要なポイントです:
- 事前面談を行い、相性を確認する
- コミュニケーションがスムーズに取れるか
- 患者さんや家族の希望・価値観を尊重してくれるか
- 柔軟な対応ができるか
紹介会社・エージェンシーの選び方
多くの場合、プライベートナースは紹介会社を通じて依頼することになります:
- 会社の実績・信頼性: 設立年数や紹介実績数を確認
- 看護師の審査基準: どのような基準で看護師を登録しているか
- 緊急時のバックアップ体制: 担当看護師が急に来られなくなった場合の対応
- 相談窓口の対応: 丁寧で迅速な対応をしてくれるか
契約時の確認事項
契約前に以下の点を必ず確認しておきましょう:
- 料金体系と支払い方法
- キャンセルポリシー
- 看護師の交代の可能性
- 緊急時の対応方法
- 守秘義務に関する取り決め
- 保険(賠償責任保険など)の加入状況
プライベートナースと訪問看護の上手な併用方法
費用面を考慮すると、プライベートナースだけでなく、保険適用される訪問看護と組み合わせて利用するのが効率的です。
併用のメリット
- 費用負担の軽減: 定期的なケアは訪問看護で、特定の時間帯だけプライベートナースを利用
- 多角的な視点: 複数の看護師が関わることで、多角的な視点からのケアが可能に
- 緊急時の選択肢: 訪問看護の対応が難しい緊急時にプライベートナースを利用
効果的な併用パターン
- 日中は訪問看護、夜間はプライベートナース
- 日中は家族も在宅していることが多く、訪問看護で対応
- 夜間の不安が強い時間帯にプライベートナースを配置
- 平日は訪問看護、休日はプライベートナース
- 訪問看護ステーションが対応しづらい休日にプライベートナースで対応
- 状態安定時は訪問看護、不安定時はプライベートナース
- 退院直後や状態変化時など、特に注意が必要な時期に一時的にプライベートナースを利用
医療チームとの連携
プライベートナースと訪問看護を併用する場合、情報共有が重要です:
- 看護記録の共有方法を決めておく
- 定期的なカンファレンスの開催
- 役割分担の明確化
- 主治医との連携方法の統一
プライベートナースを導入する際の流れ

プライベートナースを導入する際の一般的な流れは以下の通りです。
1. ニーズの整理と情報収集
- どのような医療行為が必要か
- どの時間帯にサポートが必要か
- 予算はどの程度か
- 希望する看護師の条件(経験、性別など)
2. 紹介会社・エージェンシーへの相談
- 複数の紹介会社に相談して比較するのがおすすめ
- 電話やオンラインでの初回相談は無料のケースが多い
- 具体的な希望条件を伝える
3. 候補となる看護師の紹介・面談
- 書類での紹介を受ける
- 可能であれば事前面談を行う
- 患者さんとの相性を確認
4. 契約内容の確認と締結
- 料金体系や支払い方法
- 契約期間
- キャンセルポリシー
- 緊急時の対応
- 守秘義務について
5. サービス開始前の準備
- 必要な医療機器・備品の準備
- 主治医との連携・情報共有
- 家族間での役割分担の確認
- 緊急連絡先リストの作成
6. サービス開始とモニタリング
- 初回は家族も同席して引き継ぎ
- 定期的な振り返りと調整
- 問題点があれば早めに紹介会社に相談
実際のケーススタディ

具体的なケースをいくつか紹介します。
ケース1: ALS患者のAさん(60代男性)
状況:
- 人工呼吸器を使用
- 24時間の見守りが必要
- 家族は妻のみで常時ケアは困難
導入したサービス:
- 日中(8時間): 訪問看護を週3回利用
- 夜間(16時間): プライベートナースを毎日配置
結果:
- 妻の睡眠が確保され、精神的・身体的負担が軽減
- 医療的な安全性が向上
- Aさん自身の安心感につながった
ケース2: がん終末期のBさん(70代女性)
状況:
- 在宅での看取りを希望
- 痛みのコントロールが必要
- 状態の変化が予測される
導入したサービス:
- 状態が安定している時期: 訪問看護を利用
- 状態悪化時: 24時間体制でのプライベートナース
結果:
- 痛みの適切な管理ができた
- 家族が看取りに集中できる環境が整った
- 本人の希望通り、自宅で最期を迎えることができた
ケース3: 脳卒中後のリハビリ中のCさん(50代男性)
状況:
- 退院直後でリハビリが必要
- 日常生活動作に多くの介助が必要
- 将来的には自立を目指している
導入したサービス:
- 退院後1ヶ月間: 日中8時間のプライベートナース
- その後: 訪問看護と訪問リハビリに移行
結果:
- 退院直後の不安期を安全に過ごせた
- 生活リズムの確立ができた
- 徐々に自立度が向上し、プライベートナースから訪問サービスへ移行できた
よくある質問と回答
Q1: プライベートナースと訪問看護、どちらを選ぶべきですか?
A: 以下のような点を考慮して判断しましょう:
- 医療的ケアの内容と頻度
- 必要なケアの時間帯と長さ
- 経済的な負担能力
- 家族のサポート体制
基本的には、保険適用される訪問看護をベースにして、特に必要な場合にプライベートナースを検討するのがおすすめです。
Q2: プライベートナースの費用は医療費控除の対象になりますか?
A: 一般的に、医師の指示に基づく医療的ケアについては医療費控除の対象となる可能性があります。ただし、個別の状況により異なるため、税理士や税務署に確認することをおすすめします。
Q3: 保険でカバーされるプライベートナースはありませんか?
A: 原則として、プライベートナースは保険適用外のサービスです。ただし、民間の医療保険によっては、特定の条件下で給付金が支給される場合があります。加入している保険の内容を確認しましょう。
Q4: 主治医との連携はどうなりますか?
A: プライベートナースは、基本的に主治医の指示のもとでケアを提供します。定期的な報告や緊急時の連絡体制など、連携方法は事前に確認・調整しておくことが重要です。
Q5: 介護士ではなく、看護師が必要な理由は?
A: 以下のような場合は、介護士ではなく看護師が必要です:
- 医療行為(点滴、吸引、経管栄養など)が必要
- 医療機器の管理が必要
- 状態の変化を医療的視点で観察・判断する必要がある
- 緊急時の医療的判断が求められる
医療的なケアが少なく、日常生活の介助が中心であれば、介護士の方が費用面では効率的な場合もあります。
まとめ:プライベートナースの選択肢を知って自分に合ったケアを

プライベートナースは、以下のような特徴を持つサービスです:
- 長時間のマンツーマンケアが可能
- 医療行為から生活支援まで幅広くカバー
- 保険適用外で費用負担は大きい
- 訪問看護と併用することで効率的に利用可能
在宅療養においては、患者さんの状態や家族の状況、経済的な面など、さまざまな要素を考慮してケア体制を構築することが大切です。プライベートナースという選択肢を知り、必要に応じて取り入れることで、より安心できる療養環境を整えることができるでしょう。
何よりも重要なのは、患者さんとその家族が「これでいい」と思えるケア体制です。医療者や専門家のアドバイスを参考にしながらも、最終的には患者さん・ご家族の価値観や希望を中心に考えていくことをおすすめします。
関連)プライベートナースになるには?年収、仕事内容必要な経験

